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地味で上品だけど、これは問題作だろう?と思える作品。
世の中を俯瞰で見つつ、しかしその中で翻弄されていくような。映画そのものの視点が実は既に壁男の視点であり…ということは見ている人が実は壁男で…その壁男と向き合う主人公は私と向き合っていることになるのか…って、そんなふうに捩れて考えたくなるような作品。
こういう作品は恐らく観る人によってまったく感想も違うでしょうね。捉える角度も深さもどうにでもなるというような。
単なるホラーテイストの都市伝説作品としてチラ見することも可能だし。掘って掘って掘り下げていくと、私は一体何者なんだろうか?というような自己と向き合う作品にもなるし。上のほうへ昇っていって冷静に見下ろしてみれば、世の中ってこれでいいのだろうか?と世間に問題提起する部分もあるという。
本来映画に限らず「作品」というのはそういういろんな要素がさりげなく詰め込まれているものだと思うので、そう考えると本当に良くできた作品だなと思います。答えを提示するのではなく、出ない答えを考えさせるような作品。
ついでに「考えなくてもいいよ〜」という逃げ道も用意してくれているエンタテインメント。
何度か見ると、きっと違う感想や考えがどんどん出てくるんだろうな〜という感じ。何度も見ると、堺さん演じる主役の仁科になってしまいそうで怖いですけどねえ。
でもこれは諸星氏の原作的に出てくるようなホラーの恐怖ではなく、「考えずにはいられない」という人としては当たり前のことを「しんどい」と思うような恐怖。誰か答えをくれ〜と楽なほうへ流れてしまいたくなる恐怖。でもあえて流されずに「考えたくて仕方がない」「向き合いたくて仕方がない」という方向に行くのが仁科なんでしょうねえ。
そんな問題作(と勝手に決めました)の壁男。
堺さん演じる仁科はプロカメラマン。このカメラマンという業界的な人種を演じるのってどうなんかなあ〜と勝手に心配したんですが、するだけ無駄でした(笑)。プロカメラマンとは言っても、壁男に興味を持つような男です。普通っぽく見えて全然普通じゃありませんっ。
面白いなあと思うのは、商業的な仕事の撮影のときは「早い、安い、上手い」カメラマン。所謂業界的には重宝される便利なカメラマンなんですねえ。愛想もよくて、さくさく仕事進めて、本人も楽しそうに仕事してます。だけどたぶん本当はあんまりやる気ないんでしょうね(笑)。「仕事だからさ〜大人だからさ〜」って真面目にやってる顔して、早く終わるようにさっさと進める!
チャラチャラしすぎず、生真面目すぎず、それでいて他作品ではなかなか見られない「現代人堺」がそこにいます。
ふいに思ったんですよ、所謂イマドキのあの年齢の普通にお洒落な男性を演じることって、堺さん少なくないですかねえ(笑)。
そういう意味ではちょっと今っぽいかっこいい堺さんを垣間見ることができる貴重な作品かも(笑)。
ところがこの仁科カメラマン、仕事を離れて個展のための作品づくりとなると目つきが激変。まさにそういう変化を一瞬で見せられる役者さんだから起用されたんじゃないだろうか?と思うくらいで。視線だけで人を殺す(誘惑するって意味じゃないっすよ)ような恐ろしさがあります。山南のときにも感じた普段の温厚モードと怖いような真剣モードの切り替え。
どっちが本当の仁科なんだ?っていうんじゃなく、人間誰しも社会生活を営む上で使い分けるであろう二面性。
それをINとOUTという言葉で作品中では表現しています。その狭間が壁であるという考え方がひとつ提示されていますが、それだけではスッキリできないメビウス的な感じがそこはかとな〜く感じられます。
ここが「考えたくて仕方がない」気分にさせられちゃう原因。
壁男の世界は決してパラレルじゃないんだ…と思わせます。どっかでこっちと繋がってる、それも複雑に…。
深いぞ、早川監督!だけど説教臭くなくていいぞ!
次第に壁男にはまっていく仁科ではあるんですが、狂気の沙汰…というところまでいかないのがまた妙にリアル。
狂っちゃった人を演じさせればきっと右に出るものは数人だと思われますが、この狂気と正気の狭間で普通に生活していく人の微妙さを演じさせたら、右に出るものはもっと少なくなるでしょう。それは間違いないんじゃなかろうか。
個人的見所をいくつか上げると、とりあえず度々出てくるラブシーン(笑)。
こういうシーンがことごとくぎこちない堺さんですが、今回はなかなか自然(笑)。というよりも、単純にピロートークのためだけにあるシーンというのが良かったのだと思います(笑)。
そもそもベッドでこういうトークをする男ってのもどーよ?とも思うんですが、堺さんなのでまあいっかのオッケー♪とりあえず堺さん的には珍しい鼻血シーンということで。
彼女の響子さんと雪の街を歩くシーンなんてのも結構いいですねえ。こちらは逆に堺さんの表の顔(←なんじゃそりゃ)とも言われる微笑系のほのぼのシーン。「心配だよ〜」と彼女の頭をなでなでするあたり、逆にこっちの方が鼻血ものかもしれませんっ(笑)。
あんたの方がよっぽど心配じゃ!と突っ込みたくなりますねえ。
自分の個展で響子さんと初めて出会うところなんかは、とってもキレイです。線の細い、少し陰のあるアーティストっぽさがさら〜っと流れてます。ぽつんと座って、作品を見ている彼女に声を掛けるところなんかはかなり私好み〜。
彼女の写真を撮る繊細そうな姿なんか見ちゃったら、そりゃ響子さんでなくても恋に落ちるってもんだ。
あとチラシなどになっている地下道かなんかの壁に触れるシーンはやはり秀逸ですねえ。堺さんの美しさが存分に発揮されているというか、あそこのアップをチラシにすればいいのに〜とファン心丸出しで思いました。
早川監督の画作りは基本的にとってもキレイなんだと思います。高層ビルの展望室みたいなところのシーンもそうですね。シルエットの美しさがたまりません。「あ〜これが堺さんよお〜」と叫びたくなるような画。
でもってアップもまたいいっ!この映画、横顔とかアップが結構多いような気がするんですが、カメラを構える堺さんの横顔は本当に私の好物になりました(笑)。
あとは「アテガキか?」と思わせるような薀蓄シーンもいいですねえ。いかにも「堺さんらしい」というような知識の泉系トーク。名前のない店での彼女との語りは、いかにもです。
いや、実際の堺さんがデートでこんな薀蓄トークに花を咲かせるとは思ってないんですが、なんというかイメージよ、イメージ(笑)。インタビューとかで賢いオーラをさりげなく出すから、デートでも薀蓄喋りそうな感じがしちゃうんだよねえ。
これによってもっともっと知性派俳優イメージが高まるんじゃないかと(笑)。
うーむ。これ堺ファンとしてはかなりキーポイントになる映画じゃないかと思うんですよねえ。この際、写真集とか出してもいいんじゃないかと(笑)。写真集というよりはメイキング本とかでいっぱい語ってもらってもいいんじゃないかと。
せっかくだから諸星さんとの対談とかお願いしたいですねえ。話が合うんじゃないかと思うんですよ、堺さんと諸星さん。だけど諸星さんメディアに出てこないからなあ〜。
とりあえず壁男ではなくて仁科について語ってみてほしい…。やさぱんの青年を素の自分に近いのではと言われることを否定しないならば、仁科の中にある自分要素も否定しないに違いない(笑)。
と、ファンの深読みと妄想はどこまでも続く…。
だが結末にはいまだ「?」が浮かびまくりということも確かで、若干の消化不良は否めない。そこまでが仕掛けならば素直に嵌まって「うむ〜」と頭抱えていたほうがいいでしょうね、きっと。
壁男は堺さんの代表作になるよ〜きっと。
2007.8
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