大動脈解離
大動脈の壁は左の絵のように3層構造になっています。 内膜、中膜、外膜 高血圧などのストレスで 内膜に亀裂が入り中膜が 竹を割るように裂けていく病気 が大動脈解離です。 激しい背中の痛みが出現する 事が多いです。 このような状態では大動脈は 破裂の危険があります。 解離の部位によりますが、 緊急手術を行うか 厳重な血圧の管理が必要です。 |
![]() また左の絵のように血管の枝の 根元がつぶれて血流が悪くなる ことがあります。 このような血流障害は 脳の血管、や心臓の血管(冠動脈) 腹部臓器の血管(腎臓、腸、肝臓) 足へ行く血管などで おこることがあります。 |
| スタンフォードA型 | スタンフォードB型 |
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心臓に一番近い上行大動脈に解離が及んでいる場合は、 スタンフォードA型といいます。 心臓を包む心嚢という袋の中に 出血することも多く、この場合 心臓の動きが妨げられて ショック状態になります。 大動脈弁が逆流を起こすことも あります。 脳へ血液を送る血管が閉塞して 意識障害を起こしたり、 心臓へ血液を送る冠動脈が 閉塞して心筋梗塞を合併する こともあります。 放置すれば24時間以内に 約半数の方が亡くなると言われて おり緊急手術の対象になります。 |
上行大動脈に解離が及んでいない場合はとりあえず、 血圧を下げて破裂するのを予防します。 破裂するのは怖いので予防的に手術をしてはどうか、 という声もあるかもしれませんが、 予防的に行うほど、この手術は安全性が高くありません。 |
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急性A型解離のCT像 上行大動脈と下行大動脈に解離があり、 大動脈の内側の壁がクシャクシャになっているのがわかります。 |
スタンフォードA型急性解離の手術方法
上行大動脈から腹部大動脈まで解離している典型的なA型解離の症例では、通常、上行大動脈〜弓部大動脈まで人工血管に置き換えます。
大動脈全体が解離しているのに、この部分だけ人工血管に置き換える理由は、
心臓に近い大動脈が最も破裂しやすいということと、
解離している大動脈全体を人工血管に置き換えるのは、手術の侵襲(体に対するダメージ)が大きく、危険で現実的でないということ
などです。



胸部大動脈瘤で説明したのと同様に脳分離体外循環という方法を用います。
上左:大腿動脈または腋窩動脈の送血で体外循環を開始し、上行大動脈を遮断して心臓に近い側の大動脈の壁をフェルトで補強します。
この間血液を20度まで冷却します。
上中:一旦人工心肺の送血を停止して大動脈弓部を切開し、脳へ血液を送る血管にチューブを挿入して送血を開始します。
上右:大動脈の弓部遠位側を離断して大動脈壁をフェルトで補強します。この間は脳だけ血液を送っており、胸〜腹〜下肢は循環停止状態です。


上左:あらかじめ枝が4本付けられた人工血管を大動脈に吻合し、人工血管の枝から送血を開始します。これでようやく脊髄や腹部臓器へ血流が再開します。
ここから体温を暖め始めます。
上右:心臓側の大動脈に人工血管を吻合し、大動脈弓部の3本の枝も吻合します。体温が戻り心臓が十分動くようになったら人工心肺をはずします。
この後人工血管の縫い目からの出血を止める作業に入ります。
手術時間は血液の止まりやすさで大分違いがあり、およそ6時間から10時間くらいです。
急性大動脈解離に対する緊急手術の危険性や合併症について
大動脈の破裂:診断が付き次第、手術の準備を開始しますが、手術前に破裂して間に合わない場合があります。
術後の出血:大動脈は自然に裂けるほど弱くなっているので、人工血管とのつなぎ目も丈夫ではありません。
手術中に止血できるかどうかが最大の問題です。
手術後も出血が多い場合には、もう一度、胸を開いて血腫除去や止血を行うこともあります。
輸血用の血液は大量に用意しています。
心筋梗塞・心不全・不整脈:手術中の心停止時間が比較的長時間になるので心臓に負担がかかります。
また、心臓を栄養する冠動脈も大動脈解離のために血流が悪くなることがあり、心筋梗塞を合併する危険性や、
重篤な不整脈が出現する可能性があります。
手術後は集中治療室で厳重に心電図などを監視し、状態により強心剤や抗不整脈薬を使います。
脳障害:手術中、脳の血流を脳分離体外循環に依存するので、脳の血流が障害されて脳梗塞を起こす危険性があります。
高齢者の場合は、しばらくボケ症状がでることがあります。
肺機能障害・肺炎:肺の酸素を取り込む働きが障害されることがあります。肺の状態が改善するまで人工呼吸器を装着します。
また、人工呼吸器から離れた後も痰がたまると肺炎をおこしやすくなるので、気管に直接、痰をとるチューブを穿刺挿入することもあります。
腎機能障害・肝障害・腸管虚血:肝、腎、腸などの腹部の臓器へ血液を送っている動脈も大動脈解離のため血流が悪くなることがあります。
これらの臓器は人工心肺を使った体外循環中にも血流が障害される可能性があります。
腎不全はまず薬で治療しますが、重症な場合は透析を行うこともあります。肝障害は薬で治療します。
腸管の壊死が起こると開腹手術を行うこともありますが、重篤です。
感染:全身状態が悪いので免疫力が低下しており、細菌感染を起こすことがあります。敗血症を起こして人工血管に感染が及ぶと重篤になります。
抗生剤で予防しますが、再手術が必要になる場合もあります。